容疑者Xの献身

あまりにもよかった。以下、ネタバレあり。ていうか、長い。とても。
私、基本的に推理物がすきなんですよ。で、ガリレオシリーズも大好きで、だから絶対面白いと思ってたんだけど、予想以上だった。っていうか、堤さんが素晴らしすぎてほんとうに良かった。柴崎コウはもちろん(っていうか、本当に目立たなかったなあ)、福山さえも食ってました。あの映画は、堤さんの映画でした。あと松雪さんもすごい良かった。この人の美しさは本物だなあとまた思った。きれいなひと。本当に、儚くて美しくて、たおやかで、少し不幸せそうで。男だったら手を差し伸べずにはいられない人でしょうねきっと。
堤さんがさえない独身の孤独な男で、でも実は本当に頭が良くて(ここが凄い萌える)、そして、最後の最後まで自分全てを愛する人にささげてて、最初っから最後まで、破綻なく素晴らしい演技でした。彼そのものだったと言っても過言ではない。映画の途中でも、私はフライングでぼろぼろ泣いていました。ストー/カー行為も、全部嘘で、より周りを信じ込ませるために、リアルに演じて、愛する人たちにさえ嫌われてもいいと思って行動してると気がついたから。私は悲しくて切なくて映画館でしゃっくりあげながら泣いてしまいましたよ。こんなにガンガン泣くの久しぶりでびっくりした。(っていうか、考えてみたら恥ずかしい大人だ・・・)
他に何も大切なものがない人が、愛する人とその大切な娘を守ろうとすると、ここまで捨て身になれるのかって思うと、その孤独と絶望の深さに心を痛めました。これはフィクションなのに、なんてリアルなんだろうと思った。それはきっと少なからず堤さんの力だったと思う。
何はなくとも、堤さんが本当に素晴らしかった。こんな男の人がいたら、私は絶対に愛してしまうと思った。数学の天才で(理系男子に弱すぎる。しかも数学なんて!!!最高です。物理も捨てがたいが。)、朴訥で、純粋で、でも本当に優しくて、分かりにくいけど、深い愛情を持っている人。彼が本当に全てをなげうって、彼女達のためにした行為は、確かに、献身という言葉でしか表すことが出来ない。
堤さんが、時折聞こえてくるとなりの暖かくて楽しげな笑い声に、どれだけ救われていたのか、毎日食べる弁当に心を温められていたか、会ったらにっこり笑いかけられることにどれだけ嬉しかったのか、そして、絶望して自/殺しようとした瞬間に、本当は、死にたくなかったことを教えてくれた人たちを、どれだけ大切に思っていたかを考えて、映画が終わってからもずっと切なかったのです。
本当は、彼女達の罪を背負っていたかったんじゃないかと思う。松雪さんが自首すると言ったのも、きっと望んでいた言葉ではなかったと思う。私が彼ならそう思う。彼女達のなにも、手に入らないなら、その罪だけでも自分だけのものにしたかったんじゃないかなと。
生きることにもコミュニケーションをとる事にも下手すぎて、誰とも上手く付き合えないと分かってるから、きっとなにも期待してなかっただろうと思う。だからこその、無償の愛情。それをきっとちゃんと知ってたのは、松雪さんの娘役の女の子だったと思う。松雪さんよりも。その彼女が、自分達のために全てを犠牲にした堤さんを思って、涙を流したシーンが、とても綺麗で、でもとても哀しくて、そこでまず、ぼろぼろ泣きましたよ。
いやあ、本当に切ない映画でした。よく出来ていました。堤さん最高でした。あ、そうだ、北村一輝さんも良かったです。