そして全仏の話 というか、ナダルの話。

ナダルはすごいなと思った昨日でした。
凄いという言葉ではもはや言い表せない。この人のストロークもフットワークも試合勘も超一流だけど、なによりも恐るべきは精神力というか、自制力というか・・・とにかくメンタルが強い。驚くほど崩れない。そりゃあ、クレー最強といわれるだけある。昨日の試合見て、最初はどっちに転ぶか分からなかったんだけど、途中で恐ろしく一方的になって、その時はナダル恐ろしいと思った。相手のテニスを全部壊しちゃって、何もさせなかった。ランキング3位相手にだぜ?ありえねえって思った。どんなに厳しいところに打っても、それを更に厳しく返しちゃったら相手はやることなくなっちゃうよね。自分のペースを完全に狂わされちゃう。
で、私はこのまま一方的に行くかなと思ったんですよ。3セットで2ゲームブレイクした辺りで。が、しかし、やはり、テニスはそうは行かない。流れが絶対に傾く瞬間がある。そして、それは土壇場で来た訳で。ジョコビッチが突然息を吹き返した。素晴らしいプレーを次から次へと繰り出して、ナダルが劣勢に立たされたわけです。かなりやばかったと思う。3セット5ゲームオールになった段階で、このままジョコビッチが取るんじゃないかと思った。そして、4セット、5セットまで行けば、ジョコビッチに勝機があると思った。
で、も、タイブレークまでそんなシビアな状況でも持ってくわけですよ。私は、第12ゲームをナダルが取ったのもすごいと思った。流れは完全にジョコビッチなのに、それでも自分のサービスゲームをキープしたから。何度も危ない時はあったのに。その時の恐ろしいほどの自制心、そして、絶対に崩れない所が、ナダルの本当の強さなんだろうなと思った。(それは、テニスプレイヤーを私がめちゃくちゃ好きな理由とも言えるけど。精神的強さをこれでもかと見せてくれるから。尊敬というよりはむしろ、崇拝に近い思いを感じます。)
でその後、ナダルが意外なほど簡単にタイブレークで3ポイント連続で取った時、勝負あったかな、って思った。結局、その後更にポイントを取って、楽勝とも言えるほどの点差にするわけだけど。それもまた、ナダルの力。ジョコビッチに持っていかれたはずの流れを自分に引き戻し、最後まで崩れることなく勝負を美しく収めた。うん、あのラストは本当に美しかったな。相手の失敗を待つでもなく、力が入る過ぎるわけでもなく、研ぎすませれて、集中して、最高のプレーをした。ジョコビッチはあきらめてなかったし、何かちょっとでもミスれば、ジョコビッチに流れていきかねない雰囲気もあったのにね。
昨日の試合を見て、テニスは美しくて、シビアで、洗練されているスポーツだと改めてナダルに教えてもらった気がする。

ぜーんぶ終わった段階で無責任に言ってしまえば、やっぱり勝負を分けたのは3セットの第12ゲームだったんだろうなと思う。あそこで落とさなかったナダルが、きっと全てだったんだって思う。